学習法

英語の勉強はなぜ続かない?続ける方法は「出口」を先に決めること

勉強を終えたあとの机に置かれたノートとペン
Petar Milošević / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)

結論

英語の勉強が続かないのは、根性や才能が足りないからではない。心理学の研究では、「その英語を使って結局何がしたいのか」という出口(ゴール)を先に具体的に描けている学習者ほど、学習を続けやすいことが示されている。さらに、「今日やるかどうか」をその場の気分や意志力にゆだねるのをやめ、あらかじめ「〇〇したら△△する」と決めておく“if-thenプラン”に置き換えるだけで、目標の達成率が中〜大程度の効果量で上がることがメタ分析で確認されている。この記事では、続かない理由の構造と、今日から使える3つの仕組みを整理する。

この記事のポイント

- 続く・続かないの差は「意志の強さ」よりも「出口の具体性」と「仕組み化」で説明できる

- 出口を先に決める(Dörnyeiのideal L2 self)→ if-thenプランで自動化する(Gollwitzerの実行意図)→ 忘れる前提で復習を設計する、の3段構え

- サボった日があっても、立て直す手順を先に決めておけば挫折にはならない

なぜ英語の勉強は続かないのか

ゴールが「英語ができるようになる」のまま止まっている

「英語ができるようになりたい」は願望であって、ゴールではない。何点取れば、何が話せれば区切りなのかが決まっていないと、日々の勉強が終わりの見えないタスクに感じられ、他の予定に優先順位を譲りやすくなる。

「今日だけは特別」をその場の気分で許してしまう

疲れている日や忙しい日に「今日はやらなくてもいいか」と判断してしまうと、その判断の質はその場の意志力に左右される。意志力は毎日使える量が限られているため、「やるかどうか」をその都度判断する仕組みのままだと、疲れているときほど続かなくなりやすい。

忘れることを「向いていない証拠」だと誤解する

覚えたはずの単語を数日後に忘れているのは、学習者としての適性の問題ではなく、人間の記憶の仕組み(忘却曲線)として自然な現象である。ここを誤解して「自分には向いていない」と結論づけてしまうと、そこで離脱しやすくなる。

続けられる人がやっている3つのこと

① 出口を先に、具体的に決める

Dörnyeiの「L2動機づけ自己システム」という理論では、学習者が思い描く「英語を使いこなしている将来の自分(ideal L2 self)」のイメージが鮮明であるほど、学習を続ける動機が強くなるとされている。TOEICのスコアそのものより、「そのスコアを取って何をするか」を先に決めるほうが、継続には効きやすいということだ。

まだ出口を決めていない場合は、以下のような記事が参考になる。

出口は完璧に決める必要はない。仮でいいので1つ置き、そこから逆算して今のレベルとのギャップを測るほうが、漠然と机に向かうより続けやすい。まだ英語の勉強そのものを始めていない場合は、英語学習の始め方を先に読むとよい。

② if-thenプランで、意志力に頼らない仕組みを作る

心理学者Gollwitzerが提唱した「実行意図(implementation intentions)」は、「もし状況Yが起きたら、行動Xをする」というif-thenの形であらかじめ計画を立てておく手法である。94件の研究をまとめたメタ分析では、この方法を使うと目標達成の確率が中〜大程度の効果量(d=0.65)で上がることが確認されている。

「毎日勉強する」という曖昧な目標ではなく、たとえば次のように具体化する。

  • 「通勤電車に乗ったら、単語アプリを開く」
  • 「歯を磨いたら、フレーズを3つ音読する」
  • 「昼食を食べ終えたら、10分だけ英語を聞き流す」

ポイントは、その場で「やるかどうか」を判断させないことにある。判断そのものを事前に済ませておけば、疲れている日でも「決めたことをやるだけ」になり、続けやすくなる。

③ 忘れる前提で、復習のタイミングを設計する

エビングハウスの忘却曲線が示す通り、復習をしなければ学んだ内容の多くは短期間のうちに失われていく。これは学習者の能力の問題ではなく、誰にでも起きる現象である。対策は「忘れないように頑張る」ことではなく、忘れかけたタイミングで復習が来る仕組みを先に用意しておくことだ。本サイトのフラッシュカードは間隔反復(SRS)によって、この復習タイミングを自動化している。

サボった日、挫折した日の立て直し方

続けられている人も、毎日欠かさず勉強しているわけではない。差が出るのは「サボった翌日」の扱い方である。

  • if-thenプランを一時的に小さくする:「10分だけ聞き流す」を「1分だけアプリを開く」まで小さくし、ゼロの日を連続させないことを優先する
  • 出口のイメージを再確認する:なぜ英語を勉強しているのか(①で決めた出口)を1行でも見返す
  • 「1日サボった」を失敗として数えない:忘却曲線への対策(③)はもともと継続前提で間隔を空ける仕組みなので、数日の空白があっても致命的にはならない

明日からできる3ステップ

  1. 出口を1つ、仮でいいので言葉にする(海外就職、留学、資格試験など)
  2. その出口とつながる学習ステップを学習ロードマップで確認する
  3. 「〇〇したら△△する」のif-thenプランを1つだけ決め、フラッシュカードなどの仕組みに乗せる

よくある質問

Q. モチベーション動画や名言を見ても長続きしません。なぜですか? A. 一時的な高揚感は数日で消えることが多い。効果が確認されているのは感情の高まりそのものではなく、「具体的な出口」と「if-thenプランによる仕組み化」である。

Q. 毎日やらないと意味がないですか? A. 間隔反復の研究では、詰め込みよりも間隔を空けた復習のほうが定着しやすいとされている。毎日である必要はなく、忘れかけたタイミングで戻ってくる仕組みのほうが重要である。

Q. 出口がまだ決まっていません。どうすればいいですか? A. 完全に決めなくてよい。TOEICスコア、留学、海外就職のいずれかを仮の出口として1つ置き、そこから逆算して動き出すほうが、決めずに続けるよりも挫折しにくい。

効果量はあくまで平均

本文中のd=0.65という数値は多数の研究を平均したメタ分析の結果であり、個人差がある。うまくいかない場合は、if-thenプランの粒度が大きすぎないか、出口が具体的かどうかを見直すところから調整するとよい。

出典

  • Dörnyei, Z. (2009) の枠組みを一般向けに解説:LESLLA「Motivation. Dörnyei's L2 Motivational Self System & LESLLA learners」
  • Papi, M. (2010). "The L2 motivational self system, L2 anxiety, and motivated behavior: A structural equation modeling approach." System, 38(3).
  • Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006) の効果量(94件のテスト、d=0.65)を引用:Wang et al. (2021), Frontiers in Psychology(PMC収録メタ分析論文)
  • Wikipedia「Implementation intention」
  • Structural Learning「The Forgetting Curve: Why Learners Forget (Ebbinghaus)」

Sources

  1. Motivation. Dörnyei's L2 Motivational Self System & LESLLA learners
  2. Papi, M. (2010). The L2 motivational self system, L2 anxiety, and motivated behavior. System, 38(3), 467-479.
  3. Wang et al. (2021), A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment (cites Gollwitzer & Sheeran 2006: 94 tests, d=0.65) — Frontiers in Psychology / PMC
  4. Implementation intention — Wikipedia
  5. The Forgetting Curve: Why Learners Forget (Ebbinghaus) — Structural Learning

FAQ

モチベーション動画や名言を見ても長続きしません。なぜですか?
一時的な高揚感は数日で消えることが多い。効果が確認されているのは感情の高まりそのものではなく、「具体的な出口」と「if-thenプランによる仕組み化」である。
毎日やらないと意味がないですか?
間隔反復の研究では、詰め込みよりも間隔を空けた復習のほうが定着しやすいとされている。毎日である必要はなく、忘れかけたタイミングで戻ってくる仕組みのほうが重要である。
出口がまだ決まっていません。どうすればいいですか?
完全に決めなくてよい。TOEICスコア、留学、海外就職のいずれかを仮の出口として1つ置き、そこから逆算して動き出すほうが、決めずに続けるよりも挫折しにくい。
TOBIRA編集部
  • TOEIC/英検指導経験
  • 留学カウンセリング経験
  • 第二言語習得論(SLA)にもとづく編集方針

第二言語習得論(SLA)にもとづく学習設計と、留学・海外就職の一次情報検証を編集方針とする編集部。

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