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スペイン語の単語の覚え方のコツ|忘れにくい暗記法を語学研究から整理

単語帳とペンが置かれた開いた本 — フレーズごとに語彙を覚える学習法をイメージした一枚
quinn.anya (Flickr, CC BY-SA 2.0)

結論

スペイン語の単語がなかなか覚えられない最大の原因は、覚え方の才能ではなく「忘れるタイミングに復習していないこと」です。一度に大量の単語を丸暗記しても数日で大半を忘れてしまうことは記憶研究で繰り返し確認されています。代わりに①間隔をあけて復習する(間隔反復)②イメージでこじつける(キーワード法)③英語との同根語パターンを利用する④単語だけでなくフレーズのかたまりで覚える、の4つを組み合わせると、同じ反復回数でも定着率が変わります。

この記事のポイント

- 「忘れる直前」に復習を挟む間隔反復(SRS)は外国語の長期定着を高めることが実験で確認されており(Bahrick et al., 1993)、スペイン語の単語ペアを8年間追跡した別の調査でも同じ傾向が確認されている(Bahrick & Phelps, 1987)

- 抽象的な単語は「音が似た日本語+イメージ」で結びつけるキーワード法が有効。スペイン語学習を対象にした実験で通常の暗記の約3倍の正答率が報告された(Raugh & Atkinson, 1975)

- 英語とスペイン語には2万語以上の同根語(コグネート)があり、-ción/-tionなどの語尾パターンを知ると初見の単語でも意味を推測しやすい

- 単語は単独のリストより文中の「かたまり」で覚えたほうが、会話で使える形で定着しやすい

なぜ一度に大量に覚えようとすると忘れるのか

単語帳を最初から最後まで一気に覚えて安心しても、数日〜1週間後にはその多くを忘れてしまった経験がある方は多いはずです。これは意志の弱さの問題ではなく、人間の記憶の仕組み上、一度にまとめて覚える「集中学習」よりも、時間を置いて繰り返す「分散学習」のほうが長期的な記憶に残りやすいことが心理学の実験で繰り返し示されているためです。スペイン語学習も例外ではありません。

コツ1:間隔反復(SRS)で「忘れる直前」に復習する

心理学者ハリー・バーリックらは、被験者に外国語と英語の単語ペア300組(対象言語はフランス語またはドイツ語)を学習させ、14日・28日・56日のいずれかの間隔で複数回復習させたうえで、学習終了から1〜5年後に定着度を測定する実験を行いました。その結果、56日間隔で13回復習したグループは、14日間隔で26回復習したグループとほぼ同じ定着率を示しました(Bahrick, Bahrick, Bahrick & Bahrick, Psychological Science, 1993)。つまり復習の「回数」よりも「間隔の空け方」のほうが長期記憶への定着を左右するということです。

スペイン語そのものを対象にした調査でも同じ傾向が確認されています。同じ研究チームが行った別の追跡調査では、50組のスペイン語・英語の単語ペアを学習させたうえで、復習の間隔を30日空けたグループと1日おきに復習したグループを8年後に比較したところ、30日間隔で復習したグループの自由再生テストの正答率は15%と、1日間隔グループの8%のほぼ2倍でした(Bahrick & Phelps, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 1987)。8年という長期スパンでも間隔を空けた復習の効果が消えないことを示す結果です。

実践としては、覚えた直後は短い間隔(翌日程度)で復習し、思い出せるようになるたびに間隔を少しずつ延ばしていく「間隔反復(Spaced Repetition System=SRS)」の考え方を使うと効率的です。手作業で間隔を管理するのが面倒な場合は、本サイトのフラッシュカード機能やAnkiのようなSRSアプリを使うと調整を自動化できます。

コツ2:キーワード法(語呂・イメージ)で抽象的な単語をこじつける

「音が似た日本語」と「意味」をイメージで結びつけて覚える手法を、心理学ではキーワード法(keyword method)と呼びます。心理学者リチャード・アトキンソンとマイケル・ローが1975年に行った実験では、この手法でスペイン語の単語を学習したグループの正答率は88%に達し、通常の暗記方法だった対照群の28%を大きく上回りました(Raugh & Atkinson, Journal of Educational Psychology, 1975)。

やり方はシンプルです。①スペイン語の単語の音に近い日本語(キーワード)を探す→②そのキーワードと意味を結びつけた鮮明なイメージを頭の中で作る、の2ステップです。たとえば次のような結びつけ方ができます。

  • carta(手紙・メニュー):日本語の「カルタ」に音が近い。カルタ取りの札に手紙が書いてあるイメージを作る。
  • gato(猫):「ガトー(gâteau=ケーキ)」に音が近い。猫がケーキの上でくつろいでいるイメージを作る。
  • mesa(テーブル):地理で習う地形用語「メサ(卓状台地)」と同じ語。英語の地理用語mesaは、テーブルのような形の台地を指すスペイン語mesa(テーブル)がそのまま借用されたもので、1759年には英語での使用が確認されています(Etymonline; National Geographic Education)。「テーブルのような台地=メサ」を思い浮かべれば、mesa=テーブルは覚えやすくなります。

抽象的な単語ほどイメージ化しにくく忘れやすいため、こうした「こじつけ」は遠回りに見えて効果的です。ただし語呂合わせは覚えるための一時的な足場にすぎません。実際に使う場面で何度も出会ううちに、こじつけなしでも自然に意味が浮かぶようになります。

コツ3:英語との同根語(コグネート)パターンを利用する

スペイン語と英語は共通してラテン語を語源に持つ単語(同根語・コグネート)が非常に多く、ある研究では英語とスペイン語の間に2万語以上のコグネートが存在し、学術語彙リスト(Academic Word List)に限れば570語中400語以上がコグネートに該当すると報告されています(Hout et al., Frontiers in Education, 2023)。日本語話者もカタカナ語として英単語を数多く知っているため、この関係は間接的に使えます。代表的な語尾の対応パターンは次のとおりです(Rosetta Stone公式ブログ)。

英語の語尾スペイン語の語尾
-tion-cióninformation → información
-ty-dadelectricity → electricidad
-ous-osofamous → famoso
-ly-menteslowly → lentamente
-ize-izarorganize → organizar

さらに面白い例として、日本語の「パン」があります。「パン」はポルトガル語pãoからの外来語ですが、そのポルトガル語pãoも、スペイン語のpanも、どちらも同じラテン語panis(食物)に由来する“きょうだい語”です。日本語の「パン」とスペイン語panが似て聞こえるのは偶然ではなく、遠い共通の語源を持つためです(語源由来辞典)。

ただし同根語には「false friend(似ているのに意味が違う語)」も存在する点には注意が必要です。有名な例がembarazadaで、英語embarrassed(恥ずかしい)と綴りが似ていますが、実際の意味は「妊娠している」です。同根語は強力なショートカットですが、意味は個別に確認する習慣も忘れないようにしましょう。

コツ4:単語だけでなく「フレーズのかたまり」で覚える

単語を単独のリストで覚えるより、実際に使われる短いフレーズごと覚えるほうが、会話の中で自然に取り出しやすくなります。動詞の活用も個別の表としてではなく実際の文で覚えるほうが定着しやすいことは動詞活用の覚え方でも触れていますが、名詞・形容詞などの単語も同様です。本サイトの挨拶フレーズ集メキシコ旅行フレーズ集フレーズ帳は、単語を場面ごとのかたまりで覚えるための教材として作られています。

なお同じ意味の単語でも、スペイン本国と中南米で語彙が変わる場合があります。たとえば「ストロー」はメキシコではpopote(先住民ナワトル語由来)、スペイン・アルゼンチン・ウルグアイではpajitaと呼ばれ方が異なります。渡航先が決まっている場合は、その地域でよく使われる語を優先して覚えるほうが実用的です(地域差の詳細はメキシコ旅行フレーズ集を参照)。

覚えた単語をどこまで積み上げればいいか

闇雲に語彙数を増やすより、目指す級やゴールを決めてから逆算するほうが迷いにくくなります。日常生活で困らない語彙量の目安を知りたい場合はDELE A2レベルの目安を、中南米での就労を見据えている場合はメキシコで働く日本人の現実を参照してください。単語力はそれ自体がゴールではなく、会話や試験という「出口」で使うための土台です。

よくある質問

Q. 単語帳アプリと紙の単語カード、どちらがいいですか? A. 効果の本質は間隔反復の仕組みを使えるかどうかにあり、媒体自体はどちらでも構いません。復習のタイミングを自動管理してくれる分、アプリ(本サイトのフラッシュカード機能を含む)のほうが手間は少なくなります。

Q. 1日に何個くらい新しい単語を覚えればいいですか? A. 決まった正解はありませんが、新しい単語を増やすことよりも、すでに覚えた単語を「忘れる直前」に復習できているかのほうが定着には重要です。新規の単語を欲張るより、復習が滞らない範囲に抑えるほうが結果的に定着数は多くなります。

Q. キーワード法はどんな単語にも使えますか? A. carta(手紙)やgato(猫)のような具体的にイメージしやすい単語では効果を発揮しやすい一方、抽象的な単語や前置詞などの機能語には向きません。抽象語は同根語パターンや例文ごとの暗記など、他の方法と組み合わせるのがおすすめです。

次に読む

学習全体の設計図はスペイン語の勉強法|初心者の独学ロードマップ、動詞活用の覚え方は動詞活用の覚え方、覚えた語彙を試す場としてはDELE A2レベルの目安を参照してください。

参考・出典

  • Bahrick, H. P., Bahrick, L. E., Bahrick, A. S., & Bahrick, P. E. "Maintenance of Foreign Language Vocabulary and the Spacing Effect." Psychological Science, 4(5), 316–321, 1993. https://journals.sagepub.com/doi/10.1111/j.1467-9280.1993.tb00571.x
  • Raugh, M. R., & Atkinson, R. C. "A Mnemonic Method for Learning a Second-Language Vocabulary." Journal of Educational Psychology, 67(1), 1–16, 1975. https://eric.ed.gov/?id=EJ118388
  • Hout, M. C., Montelongo, J., White, B. L., Hernandez, A., & Serrano-Wall, F. "Orthographic similarity ratings for English-Spanish cognates from the academic word list." Frontiers in Education, 8:1225169, 2023. https://www.frontiersin.org/journals/education/articles/10.3389/feduc.2023.1225169/full
  • Rosetta Stone公式ブログ「35 Spanish Suffixes」 https://blog.rosettastone.com/spanish-suffixes/
  • 語源由来辞典「パン」 https://gogen-yurai.jp/pao/

Sources

  1. Maintenance of Foreign Language Vocabulary and the Spacing Effect (Bahrick, Bahrick, Bahrick & Bahrick, Psychological Science 4(5), 1993)
  2. Retention of Spanish Vocabulary Over Eight Years (Bahrick & Phelps, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition 13(2), 1987)
  3. A Mnemonic Method for Learning a Second-Language Vocabulary (Raugh & Atkinson, Journal of Educational Psychology 67(1), 1975)
  4. Orthographic similarity ratings for English-Spanish cognates from the academic word list (Hout et al., Frontiers in Education 8:1225169, 2023)
  5. 35 Spanish Suffixes — Rosetta Stone公式ブログ
  6. 語源由来辞典「パン」

FAQ

単語帳アプリと紙の単語カード、どちらがいいですか?
効果の本質は間隔反復の仕組みを使えるかどうかにあり、媒体自体はどちらでも構いません。復習のタイミングを自動管理してくれる分、アプリ(本サイトのフラッシュカード機能を含む)のほうが手間は少なくなります。
1日に何個くらい新しい単語を覚えればいいですか?
決まった正解はありませんが、新しい単語を増やすことよりも、すでに覚えた単語を「忘れる直前」に復習できているかのほうが定着には重要です。新規の単語を欲張るより、復習が滞らない範囲に抑えるほうが結果的に定着数は多くなります。
キーワード法はどんな単語にも使えますか?
carta(手紙)やgato(猫)のような具体的にイメージしやすい単語では効果を発揮しやすい一方、抽象的な単語や前置詞などの機能語には向きません。抽象語は同根語パターンや例文ごとの暗記など、他の方法と組み合わせるのがおすすめです。
TOBIRA編集部
  • DELE/SIELE指導経験
  • 中南米留学サポート経験
  • 第二言語習得論(SLA)にもとづく編集方針

DELE/SIELE対策とスペイン語圏留学の一次情報にこだわり、第二言語習得論(SLA)にもとづく学習設計を行う編集部。

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